渋谷教育学園幕張中学校・高等学校、通称「渋幕」の制服がリニューアルされました。
それだけなら別に大した話でもないのですが、学校HPに、
『これは将来の中高一貫化を見据えたもの』の文章があるため、高校募集停止につながる、本郷、豊島岡、都立一貫に続いてまたか、という見方が大半でちょっとした騒ぎになっています。
今日はこの渋幕、制服リニューアル問題?改め高校募集停止危機問題を掘り下げます。
①情報をちゃんと読む
まず学校HPより制服リニューアルの告知の文章をちゃんと見てみましょう。
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制服のリニューアル
2019年6月19日
元号が平成から令和へと改元されるなか、学校では来年度からの制服リニューアルにあわせて準備が進められています。「渋幕の伝統を守りつつ、時代にあわせてスタイリッシュに」がそのコンセプトです。
例えば、ジャケットの色は従来のままで全体の印象は変えずに、3つボタンから2つボタンへ、腰ポケットがフラップ型へ、シルエットが最新の体型データに合わせて変更になる等の、アレンジが施されます。
最大のポイントは中高のシャツ・ブラウスの(現在の高校のものへの)統一ですが、これは将来の中高一貫化を見据えたものです。そのほか、女子の替えスカート、替えリボン・替えネクタイの追加、ポロシャツの導入が予定されていて、これらは生徒による投票によって今後順次決定されていきます。
さあ、新しい制服像はどのような変化を遂げるのでしょうか。多くの学校関係者が楽しみにしています。
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確かに、中高一貫化を見据えた、という言葉があります。
あれ?いままでは中高一貫ではなかったのかなと思いませんか?
情報はこの学校告知しかないとわけですから、よくわかりませんが。
②中高一貫教育校の分類
中高一貫、中等教育学校やら何種類かにわかれますが、わかりやすくするために中等教育学校(小石川とかね)や連携型中高一貫校といった少々特殊なものを除くと以下の3つがあります。
(1)完全中高一貫校:高校での生徒募集は原則行わない。中学校から高校に移行する形で6年間の一貫教育を行う。
例→ 桜陰中学校・桜陰高等学校
(2)併設型中高一貫校(混合型):高校から入学した生徒と中学から入学した内部進学の生徒が、高校の3年間のどこかのタイミングで混合する形。
例→ 渋谷教育学園幕張中学校・高等学校(2年次より混合)、開成中学・高等学校(2年次より混合)
(3)併設型中高一貫校(別クラス型):高校から入学した生徒は中学から入学した内部進学の生徒とは3年間別クラスになる。
例→ 栄東中学校・高等学校、鎌倉学園中学校・高等学校
豊島岡、本郷は(2)から(1)に変更されるということです。学校のHPで高校募集の停止とはっきり明言しています。
③渋幕は?
渋幕の場合はどうでしょうか。学校HPの文章は、『将来の中高一貫化を見据え』というのは、厳密には正しい表現ではないと思います。いまでも中高一貫校(混合型)です。
ただこの告知は学校の制服をかえるよ~というものなので、そこまで厳密な表現は必要ないのだと思います。
将来を見据えたものという表現からすると、(1)のままで行くよ~とは考えにくく、(2)から(1)に変更を『見据える』と解釈するのが自然だと思います。
となると、やはり、現状の中高一貫校(混合型)から、完全中高一貫校への変化をさしていると考えるのがよさそうです。
つまりどこかのタイミングで高校募集は停止されるかと。
④そもそも渋幕は高校募集を停止する必要あるの?
渋幕の現状、本郷、豊島岡ともに高校募集を停止する理由は、
1.中入生と高入生に学習進度、ポテンシャルに差があるためカリキュラムを2本作る必要がある。
2.現状、高校受験でも公立トップ、2番手校の併願校となっている。
3.別学を避ける流れ。共学志望が多い
4.中高一貫校への高校入学を避ける流れ
生徒会や学校の行事の中心が中入組になることが多く、6年行っての一貫校という考えもある。
があります。一方開成や筑駒は1.2.の影響が本郷、豊島岡より少ないので高校募集を行っているのだと思います。
渋幕はどうでしょうか。
・千葉公立トップは県立千葉で有名な伝統校です。渋幕を辞退して県立千葉に行く人も一定数いそうです。経済的な理由とか通学時間とかも影響する可能性があります。
・渋幕は共学のため、本郷、豊島のように別学を避ける層の影響はない。
・中高一貫校への高校入学を避ける流れについては、千葉公立トップの県立千葉も中高一貫校(混合型)。
ただし、県立千葉は高入が多いのに対して、渋幕は中入が多いという差はある。
本郷、豊島岡に比べると、高校募集を停止する絶対的な理由はないように思えます。
都内はほぼ進学校x私立の高校募集はなくなりましたが、埼玉、千葉にはまだ結構残っている印象があります。
ただ、高校募集を停止する学校がほとんどになってしまった現状からすると、渋幕もやぬを得ないかもしれません。
同じ母体が運営する渋渋はかなり昔に高校募集をやめているというのもありますし。
今調べてみたら2002年に渋渋は高校募集を停止していました。
⑤さいごに
高校受験は、公立は進学校、私立は大学付属かというすみわけになってきており、進学校x私立の選択肢は著しく狭まってきているといえます。
渋幕が高校受験を停止すると、進学校では、開成、市川、桐朋、広尾医進SC、栄東、あと国立ぐらいか。
今後は高校受験から中学受験に移行してくる層がますます増えるものと思われます。
【ご参考】近年高校募集を停止した学校
・1997年~2009年までに高校募集を停止した学校(抜粋)
浅野、サレジオ学院、大妻多摩、学習院女子、立教女学院、獨協、武蔵、暁星、光塩女子学院、渋谷教育学園渋谷、逗子開成、東洋英和女学院、品川女子学院、浦和明の星女子、共立女子、東横学園大倉山、聖学院、吉祥女子、穎明館、大妻中野、青山学院横浜英和、横浜女学院
・2010年以降に高校募集を停止した学校(抜粋)
2010年 東京都市大付属
2011年 海城、神奈川学園、洗足学園、東京純心女子、富士見
2012年 攻玉社、麹町学園女子、東京女学館
2013年 かえつ有明
2014年 京北学園白山、高輪2017年 東邦大付属東邦
2018年 開智日本橋学園、三田国際学園
2019年 成城学園
==2020年以降に高校募集を停止する予定の学校(抜粋)
2021年 本郷学園、都立富士、都立武蔵、都立両国、
2022年 都立大泉、都立白鷗、豊島岡女子
・豊島岡が高校募集を廃止『女子が都立トップと併願する進学校がない問題』
概要:『豊島岡女子の高校募集廃止と教育格差』という新聞記事の内容と考察。
豊島岡は中入組と高入組が交わらない傾向がある→高入生はギャルっぽい、中入生は非モテで人種も違う
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・日経電子版『中高一貫校、高校の募集停止相次ぐ 豊島岡や本郷など』を見て
概要:高校募集に対する各学校、おおたとしまさ氏のコメント
本郷「第1希望の生徒に来てもらいたいというのが一番の理由」
豊島岡「高校から私学を考える人がぐっと減った」
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・渋幕が制服リニューアルし高校募集停止か、完全中高一貫校への布石
概要:渋幕の制服リニューアル問題改め高校募集停止危機問題を学校のHP内容からどこよりも詳細に掘り下げ。現在の渋幕の状況と高校募集を停止する必要性があるかの考察
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・【最後の砦】開成が高校募集を停止する可能性は?
概要:高入進学校がなくなるなか、難関校で唯一高入を続ける開成校長のコメント。
開成高入に影響がある日比谷との比較。高入を続けられている理由とは?
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・豊島岡女子の高校募集を停止する背景。他高とは違う学校上の仕組みも原因か。
概要:豊島岡の高校募集停止についての深掘り。実は、他の高入高とは決定的に違う学校上の仕組みも原因。その仕組みとは。
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・豊島岡女子が2022年より高校募集を停止、とその影響【中学受験に影響あり】
概要:高校募集停止に踏み切った基本的な理由、中学受験に対する影響など。
高入生の実績が振るわなかった理由、都立トップ高の併願校化の影響
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・本郷、都立一貫が高校募集の停止。完全一貫化が加速。
概要:本郷、都立一貫が高校募集を停止することを発表。完全一貫化が加速。
高校募集にはメリットもあったが、募集停止に踏み切った理由。
1997年以降、高校募集停止を行った学校一覧。こんなにあった。
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