週刊ポスト4月5日発売の週刊ポストに「「超名門公立中学」通知表に「1」を連発した新校長の主張」という記事が出ています。通知表の評点、受験での内申点の平等性について考えます。
『麹町中、工藤メソッドによる内申点バブルが崩壊!』
「「超名門公立中学」通知表に「1」を連発した新校長の主張」
①古くからの名門で最近は教育改革で注目が集まる麹町中。工藤校長が去った後の『通知表』で揉めている。
②保護者の声「ずっと『5』を取っていた科目が『2』で驚いた。」「『3』や『4』だったのが校長が変わると『1』ばかりに」
③工藤メソッド:定期テストを廃止し単元テストで評価を決めるが、点数が低ければ何度でも再テストが受けられるため点数が高くかさ上げ可能になっていた。
⑤事実この工藤メソッドで、数学で45%が5を、英語以外の科目で50%以上が4以上と都内でも高すぎる内申点が話題に。
⑥工藤校長は「全員に『5』をつけて何が悪い!」と公言、内申点の取り易さもあり越境入学者が多すぎる事態に。
⑦工藤校長が去り、新校長になり通知表の評定が明らかに下がった人が続出。
⑧ある保護者が学校側に下がった理由を確認「授業に対する積極性や関心度を考慮した」とのこと、新校長によると評価方法は以前と変わっていないという。
⑧工藤校長は積極的に子どもと話をし、やんちゃな子にも目を掛けるタイプ、新校長は生徒とは少し距離を置くタイプ。そのスタンスの差が評価にあらわれたようだ。
⑨保護者「今までが異常だっただけ」工藤校長のときが良すぎた。通知表バブルは崩壊した。
『麹町中、工藤校長から新校長になり内申点バブルが崩壊!』
— 中学受験の下書き (@jukenshitagaki) 2021年4月7日
・工藤メソッド:点数が低ければ再テストで点数を吊り上げ。工藤「全員に5をつけて何が悪い!」
→越境入学者が多すぎる事態に
・新校長になり通知表バブル崩壊、今まで5だった科目が2へ。3~4だった科目が1へ。 https://t.co/equJyqdd7z
通知表は内申点として高校受験に大きく影響
校長が変わったらとたんに通知表の成績が下がってしまい保護者が困惑している、どうやらその原因は前の校長時代の成績が良すぎたのでは?という話。
保護者の一番の心配は通知表が高校受験の内申点に使われること。受験時の点数の一部になります。都立高受験では推薦試験では50%、一般試験では30%が内申点です。この内申点の不透明性は以前から言われていたところです。ある意味お決まりのネタ。
麹町中学の改革は、教育内容としては魅力的に感じますが、公立高校受験を前提とした時に内申で学校間の不公平感が出るのはなかなか納得できません。
— Motoサピックス講師 | 受験マーケター (@moto_sapi_t) 2021年4月7日
個人的には、推薦など多様な選抜方法を担保した上での入試一般勝負が最も腑に落ちます。 https://t.co/vkkUwmqPXI
工藤校長のオール5批判に対するコメント
工藤校長「麹町中の教育により勉強するようになった、学力つき優秀になっただけ」
(ホントに?、それにしても良すぎない?副教科はどう説明するの?「運動するようになった」だけ?なの?、じゃ美術の高評価は?)
工藤校長の教育改革
2019年9月カンブリア宮殿で工藤校長の教育改革が特集されていたときの記事
入学希望者が殺到~いま注目の公立中学校:読むカンブリア宮殿|テレ東プラス
・学校で当たり前とされていた「宿題」「定期テスト」「クラス担任制」を廃止、生徒の自主性を重視した学校運営を軸とし、校則も自立につながらないものは全て廃止した。
工藤校長の内申かさ上げメソッド
工藤校長は「全員オール5で何が悪い!」と宣言。大盤振る舞いの評定をしてきました。
肝となるのは再テスト制度
その肝となるのは再テストです。定期テストのかわりに単元ごとの小テストをやりその点数が通知表のベースとなります。そして何度でも点数が取れるまで再テストを受けることが可能。
何度もテストを作るのは先生も大変だなとおもっていたら、なんと元のテストと再テストの内容は最初のテストとほぼ同じものだというんですよ。2019年9月のテレビ東京の「カンブリア宮殿」で放送してました。
先ほどあげた、テレビ東京のサイトに記事にそのことが書かれています。
2019年9月26日 放送 千代田区立麹町中学校 校長 工藤 勇一 (くどう ゆういち)氏 |カンブリア宮殿: テレビ東京
「中間・期末テスト」を廃止し、代わりに「小テスト」を積極的に実施しているという。しかも、この「小テスト」、希望すれば、ほぼ同じ内容の再試験が受けられ、学校の成績には、その2回目の点数が反映されるという。
最初は0点でもよくて、2回目は答えを暗記してテストを受ければいいわけです。そうすると、評定は4か5にはなりそうです。答えを覚え間違ったりする子もいそうですが、そういう場合はもう一度再テストを受ければいいです。再テストを受け続けることにより「学習意欲がある」とも評価できるのでさらにお得。リスクなく高評価を得ることができます。事実、番組内で取り上げられた子は2回目のテストで高得点をゲットしていました。まさにメシウマ制度。
工藤メソッドの成果
都内の中学校が生徒にどのような評定をつけたかは、東京都教育委員会より公表されています。工藤メソッドによる高評定が確認できます。
千代田区にバカ高い評定をつけている学校がありますので、すぐに麹町中学とわかります。千代田区の中学校「1」または「2」です。評定がズバ抜けているのでわかりやすい。
2017年 中学校等別評定割合(個表)
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2017/files/release20170323_06/besshi.pdf
2018年 中学校等別評定割合(個表)
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2018/files/release20180322_03/betten.pdf
2019年 中学校等別評定割合(個表)
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2019/files/release20190328_05/wariai.pdf
2020年【中学校等別評定割合(個表)】
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2020/files/release20200326_05/wariai.pdf
2020年を例にとると、数学の5が45%と都内でダントツのトップ、主要科目で4と5を量産。全体的に麹町中は、5が付く割合、4がつく割合がダントツで多い。
工藤校長が「全員5で何が悪い」というだけあって副教科も大盤振る舞い。
音楽では評定『4』以上の生徒が77%、美術でも『4』以上が73%。一方、他の中学は『3』以下の生徒が70%以上となっており、中学校間の差がエグイ。
2018年は麹町中の美術はなんと『4』以上の生徒が86.2%、まわりの中学校では『3』以下が70%以上、『3』以下の生徒が85%になる学校もある。こうなってくると偏り過ぎて、他の中学がかわいそうになってきます。
越境入学の人もいるぐらいだから、麹町中には優秀な人の割合が多少は多いのだとは思いますが、それにしても公立中でこんなに周りと差が出るってどうなんでしょうか。
美術だけでなく、体育、音楽、技術家庭科などの副教科でも圧倒的な差なんですよね。これらの科目は才能が必要な科目でもあるので、内申点を気にする人はホント助かりますね。
ここまでくると入った中学で内申点が決まるといっても過言ではないように思えてきます。たとえば麹町中学は体育も都内でトップクラスの評定ですが、スポーツ少年団の加入率が極端に高いとかそういうことでもない、美術の評定も高いですが、絵画展への入選が極端に多いわけでもなさそうです。他の中学の評価が低すぎともいえるかもしれませんが、結果として4と5を量産し2や1をつけないので、他中学との差がますます大きくなってしまいます。
内申点バブルが崩壊!?
冒頭の記事だと通知表が全体的に悪くなったとのことですが、2021年の東京都教育委員会の資料2021中学校別評定割合を見ると、少し下がったようにもみえますが、まだまだ他地域との差はあるようです。
さいごに
内申点の評価は難しいですが中学校ごとの差がここまで大きいのであれば平等とはなかなかいえないと思います。工藤校長の教育改革は魅力的ではありますが、結果不平等を助長した形にもなっています。現在の内申制度を改善する方法はないのでしょうか?
・内申点を高校受験に使わない→学校が荒れそう。先生が裁量を持っているということである程度まとめることができている側面もあるのではなかろうか。
・模試の点数などで学校間の調整をする→千葉とかはコレだったはず。今よりは多少マシだが、点数調整は共通テストを見てもわかる通り文句は出る。
上にも書きましたが、内申点は推薦で50%、一般で30%と大きな割合を占めます。内申点のリスクがあるために中学受験という選択肢を選ぶ人もいますが、経済的に無理な家庭があるのも事実。選択肢の多様化などが必要なのかもしれません。
参考になりましたら、応援クリックしていただけると嬉しいです。
↓ ↓ ↓ ↓