ちょっと新型コロナウイルス以外の話も書こうかと、タイトルの通り、とある私立中学の算数の入試問題が深いというか、今の算数教育の違和感を指摘しているというか、風刺していると言われています。
・2020年麗澤中学校の算数の最終問題大問[5]
この問題、ワンダーラボというサイトの2020年良問大賞の一つとして挙げられています。→ ワンダーラボ 中学入試算数 良問大賞2020 | WeThink
「あまりのある割り算」の答え方について、等号本来の意味からすると正確でない、ということを風刺している問題です。現状の算数教育について、問題提起を行っているようにも思えます。
ワタシの感想としては、単純に面白い問題だなと思いました。答え自体はそんなに難しくはないと思うのですが、算数の問題で「気になることを答えなさい」という設問が斬新です。矛盾を指摘することが作問者の意図ですが、「気になること」という「違和感」を問いにしているのがとてもおもしろい。
解答ですが、これ四谷大塚にも解答はないんですよね。
というわけでワタシの解答をのせておきます。間違いではないと思います、満点でなかったらすみません。
・解答らしきもの
(1)「=」の意味→「=」の左側と右側が同じになるという意味。
[解説]小学生の中には「=」の意味を「答えは」ということと考える人もいますが、よろしくはないです。「=」は等しいものを結ぶための記号で、=の左側と右側、つまり左辺と右辺が等しくなるというのが本質です。
たとえば、半径12の円の面積を出す場合に
12x12=144 x3.14 = 452.16 みたいな計算式を書く子がいます。これは左辺=右辺となっていないので間違いです。
「=」を「等しい」ではなく、「答えは」と解釈しているからです。12x12(答えは)144、144x3.14(答えは)452.16 子供がやらかしがちなので注意が必要で、この手の計算プロセスをやる子は計算間違いが多いという特徴もあります。
(2) 「29÷7」の計算結果と、「37÷9」の計算結果が同じ「4あまり1」となっている。
つまり(1)にあてはめると、「29÷7」と「37÷9」が同じという意味になる。
しかし実際は「29÷7」と「37÷9」の計算結果は同じにはならない。
算数の問題で気になること、つまり違和感を答えさせる問題。今まで強く意識していなかったことでも、もう一度意味を考え直してみよう、というメッセージにも読めます。またワンダーラボのコメントにありますが、算数教育に対して風刺というか問題を投げかけているようにも見えてきます。
補足。この問題解答用紙を見ると解答欄がとても大きいんですよね、この問題に対しての気づきをたくさんかいて欲しいという学校の思いがあらわれているかもしれません。
・前年の2019年の最終問題も面白い
初めて分数の足し算をする子どもに対して、1/3 + 1/ 4の計算方法を説明してくださいという問題で、これは通分の考え方をどう説明するかがポイントです。
[解答]後で紹介する日能研も同じ方法ですが、ピザを使うやり方がいいです。
・3分の1→丸いピザを3等分したうちの1つ
・4分の1→丸いピザを4等分したうちの1つ
大きさが違うので、12等分することで同じ形のピースに揃えて数えることができる
3分の1→丸いピザを3等分したうちの1つ→丸いピザを12等分したうちの4つ分
4分の1→丸いピザを4等分したうちの1つ→丸いピザを12等分したうちの3つ分
3分の1と4分の1を足すということは、12等分にしたピザだと4+3で7個分
という考え方です。
日能研のシカクいあたまをマルくするにも取り上げられています。図があるので解答はこちらのほうがわかりやすいと思います。
2019年05月 麗澤中学校【算数】 | 日能研 シカクいアタマをマルくする。
今日取り扱った2題を出題した麗澤中学は千葉にある私立中学で四谷大塚の偏差値ではアドバンスドのクラスが54程度、通常クラスが48程度と極端に難易度が高い中学というわけではありません。そしてこの2題の問題は難関中学で出るような難問ではありませんが、問題集を解くだけでは答えるのが難しい問題です。難問を解ける必要はないけど、ちょっとした算数のことに興味を持てる子、面白いなと思ってもらえる子に入学して欲しいというのが学校の主張だと考えます。
今回はここまでっす。
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