各私立中学は、来年2021年入試の募集要項を出し始めましたが、コロナ感染再拡大のリスクや受験時のソーシャルディスタンス維持、三密の観点からどのような入試になるかはまだわからない状況が続いています。
現時点で決められないのは仕方がないとは思いますが、どのようにやりたいのか学校側の意思があまり見えてこないのが残念です。そんな中、朝日新聞EduAに以下の記事が出ました。
栄東中は日本一中学受験者数が多い学校で、近年は1万人を超える受験生が集まる学校です。この学校の井上和明・入試広報センター長がインタビューに答えていますが、かなり具体的な回答がされており、学校としてコロナ影響がある2021年入試をどうするのかという、意思表示ともいえる内容が書かれています。
私は、栄東中の学校や入試対策についてはかなり詳しい記事を書いています。
で、今回この朝日新聞EduA『受験者1万人超・栄東中入試の「コロナ対策」は? 「密」回避に工夫凝らす』の記事をレビュー、内容や感想についてあれやこれや書いていきたいと思います。
記事のざっくりまとめとコメント
青字が記事の内容、赤が私のコメントや感想です。
2021年入試について
栄東「今年の2020年入試は栄東中と系列校の2校、合計3校で行った。1教室当たり40人。2021年入試はコロナ影響で同じようにやるのは無理。」
[コメント]栄東の受験者数は全日程で1万人を超えます。1月10日だけでも6000人以上の受験生が会場に押し寄せます。会場には、当然、受験生本人だけでなく保護者、塾関係者も集まりますので、3会場の合計で1万数千人がつめかけることになります。
また各受験会場は駅から近いというわけでもなく住宅地などを通って徒歩で行くことになりますので駅や移動中のリスクもあると言えます。
保護者の待機所は体育館やホールを使うケースが多いですが、2021年入試では、保護者の待機場所などを確保することは難しいかもしれません。
2021年入試の栄東のソーシャルディスタンス3密対策
栄東「2021年入試では、集合時間に時差をつけ300人程度ずつ分散して集合し密集を避ける。午後受験の影響が出ない範囲で行いたい。会場は、従来の3会場から増やす予定、1教室20人程度を検討。アクリルパネル全受験者7000人分、教員用のフェースシールドを確保済、日程は現時点で極端にかえる予定はない。」
[コメント]7000人分のアクリルパネルを準備したということは、実質的に1月10日入試を(会場は増やすが)従来通りの日程で試験をやる、という意思表示だと考えられます。2020年の受験者数が1番多かったのが1月10日の応募が6200人で実際の受験者が6098人でした。7000というのはこれを意識しての数字です。
従来の3会場は、第1会場:栄東中学校、第2会場:埼玉栄中学校、第3会場:栄北高校でした。会場を増やす場合は、まず以前に会場になったことがあり系列校の「さとえ学園小学校」が会場になる可能性が高いといえます。
また系列校に、平成国際大学や花咲徳栄高校もありあますが、今年会場となった3会場のあるさいたま市から距離があるので、会場にできるかは微妙なところです。
幸いなことに2021年の1月10日は日曜日なのでさいたま市や東京よりの大学などを借りて、試験会場にする可能性があると思います。なお1月10日以外の入試日は今まで使っていた3会場で足りると思われます。
補足としては、埼玉栄中学校は同中学で1月10日午後入試が行われるため、1月10日午前に栄東中、午後に埼玉栄中を受験する受験生は、午前中の栄東中学の受験会場は必ず、第二会場の埼玉栄中学になります。(これにより午前→午後の移動がなくなる)
2021年試験内容について
栄東「今までの勉強を評価したい、学校がなかった期間を考慮して、多少基礎的な知識を問う問題にするつもり、問題数を減らして思考力、判断力を重視したい。」
栄東「基礎学力をしっかり問えるのはペーパー試験しかなく、現時点では学校に来て試験を受けてもらう従来形式で行う方針。」
栄東「今後の感染再拡大、1月に会場試験ができない場合に備えて、オンライン試験導入も検討している。」
[コメント]深い知識ではなく、基礎力を見つつ、思考力・判断力も見る問題になりそうでうすね。この学校だけ受験するという人は多くないと思いますが、そういう傾向かもしれないと頭の隅に置いておいていいと思います。現時点だとオンラインはあまり考えておらず従来形式の受験となりそうです。
2021年入試に対するコロナ影響
栄東「受験者数は減ると考えている。東日本大震災時にかなり減ると考えたが実際には極端には減らなかった。」
栄東「東京からは下りの電車なので密は軽減される。東京志向が強かった埼玉の子が地元の学校に目を向ける機会になればと考えている。」
栄東「従来5月6月に行っていた説明会を7月末に延期。6年生限定で2回行い入試日程・受験内容を説明予定。」
[コメント]受験生がコロナ影響で受験校を減らすことが考えられます。1)お試し・前受校、2)物理的に通えない学校、3)通学時間が長い学校、4)志望順位が低い学校、これらの学校が減らす対象になりやすいと言えます。栄東は当てはまる可能性が高く、受験生が減少する可能性が極めて高いです。また従来なら栄東を複数回受験した人も1回だけにするとかありそうです。従来1万人を超える受験生を集めましたが、今回は2~3割は減ると予想しています。もちろん今後のコロナ影響次第の面はありますが。受験人数の増減に関するデータは今後の模擬試験でもわかってくるはずです。
説明会については、志望順位が低いとしても受験するのであれば必ず行くようにしてください。
今回のインタビュー記事を読んで全体的な感想
今後コロナ影響で変更する可能性はあるものの、今回示された栄東の方針は首都圏の2021年入試を考える上でとても大事なものとなります。
2021年首都圏中学受験全体の方向性に影響する可能性
栄東の入試日程は1月10日と帰国生入試など特殊な試を除いて、首都圏で最初の受験になります。当日はテレビメディア等の取材も入り大きく放送されます。また日本一の受験者数を誇る中学ということもあり、
他校も栄東や埼玉校の入試対応を意識せざるを得ない状況になります。「栄東はできたのに、なぜ〇〇中はできないの?」という話にもなりかねません。
栄東は受験者数が多く、受験者の成績レンジが高いということもあり、塾関係者はもちろん、他中学もその動向を見ているのが現状です。
発言内容が割と具体的で十分ありえる内容
この手のインタビューは抽象的な事言って終わりというパターンが多いものです。
今回のインタビューは割と話が具体的で、今後のコロナ影響次第ではあるものの、学校としての2021年受験の方向性を示したといえると思います。受験形式は従来のものがそのまま踏襲されそということで、朗報と考えた人は多いのではないでしょうか?また全体的にひっかかるようなおかしな話、というのもありませんでした。
基礎的で、思考力・判断力を重視した問題、というのは若干不鮮明ではありますが、問題数を減らす、深い知識を問う問題は出にくいということを明言したといえます。
栄東中は元々受験内容をはっきり言う学校である
いろいろな学校の説明会に行くと気が付きますが、学校側が問題の入試傾向を語る場合に、どうとでも取れる抽象的なことしか言わない学校と、はっきりこの分野を出しますと言う学校があります。もちろん中間的な学校も多数あります。栄東中学ははっきり言う学校であり、説明会に参加された方のブログなどでもそれは言及されています。というわけで栄東の広報が言う内容は信頼してよいかなと個人的には考えています。(他の学校がウソを言うわけではないですが、はっきりしない言い方をする学校があるのは事実です)
ちなみに秋以降の学校説明会に行くと、入試問題について担当から分野の説明があります。栄東の場合は、たとえば以下のような感じです
『A日程は、理科の地学分野「天体、特に太陽・月・地球の位置関係など…」、「B日程は〇〇…」』このぐらいに具体的です。
説明会には行くべきとういのはこういう情報を得ておくというのも理由の一つです。
さいごに
2021年入試まではまだ時間があり、今後のコロナ影響次第で変わる可能性はあります。しかし栄東中の現時点での考えとしては、問題傾向は若干かえるにしても、日程、形式、選抜方法は従来の日程、方法を踏襲したいと考えており、それをするために、場所を増やしたり、アクリル板の準備をしたりを行うということです。
受験生としては従来通りの対策を継続することが大事だと思います。
受験の形式が変わってしまうのは何かと不安がありますから、従来通りにやりたいという学校の考えには同意する人が多いと思いますがいかがでしょうか?
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